医療法人秀友会 札幌秀友会病院

アーノルド・キアリ奇形(I型)

頭蓋と脳・脊髄の成長のバランスが取れていない場合に、小脳、脳幹の一部が頚椎の内部に落ち込み、脊髄上端部の周囲に存在する脳脊髄液の貯留部(くも膜下腔:大槽)が狭小化して脊髄周囲が窮屈になり、脳脊髄液の循環障害を来たします。

循環できなくなった脳脊髄液が脊髄表面から少しずつ脊髄内に侵入していき、最終的に脊髄の内部に貯留していくと脊髄空洞症と呼ばれ、脳内の脳室というところの脳脊髄液の貯留量が増加すると水頭症と呼ばれる病態が合併します。この病態を4つの病型に分類して1891年に報告したオーストリアの病理学者である Hans Chiariの名前からキアリ奇形の病名がつけられました。

頭蓋頚椎移行部図(正常)
頭蓋頚椎移行部(正常)
アーノルド・キアリ奇形図(I型)
アーノルド・キアリ奇形(I型)

頭痛は咳、くしゃみ、排便など力んだ際(怒責時)に後頭部から首の付け根の付近が差し込むように痛むことが多く、就寝中に枕で首の付け根が圧迫されると痛むこともあります。
上肢の痺れ、感覚障害は、首の付け根から両肩、前胸部、両上肢、両手にみられることが多く、“宙吊り型の感覚障害“と称されます。

正常例(頭蓋頚椎移行部)

正常例写真

小脳扁桃部の落ち込みはなく、大槽もきれいに見えている

アーノルド・キアリ奇形(I型)47歳女性

手術前
手術前写真

小脳扁桃部が下垂して、大槽が見えなくなり、脊髄周囲が圧迫されています

手術後
手術後写真

後頭骨、第1頚椎を切除して、硬膜を切開することで、脊髄周囲の圧迫が改善しています

宙吊り型の感覚障害

人体の胸から両手の先までを表す図

I型からIV型まで分類されていますが、I型とII型がその大部分を占めます。治療法は外科治療以外には無く、施設によってさまざまな手術法が選択されています。当院では後頭部のみの小さな切開で後頭骨および上位頚椎の削除に加えて脊髄を包んでいる硬膜を切開して人工硬膜を縫い合わせて拡大し、脊髄周囲の窮屈さを解決する術式(大後頭孔減圧術、硬膜形成術)を行い、良好な治療成績を得ています。

脊髄周囲の窮屈さが解決すれば、合併している脊髄空洞症も消失・縮小する可能性があります。

医師紹介

脳神経外科

安斉 公雄

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